人間関係や仕事、勉強に家事と、日々忙しく過ごしていると、「体が重い」「気分がすぐれない」など身体には目に見えない不調が起きているかもしれません。そのような時に良い香りや好きな香りがただよってくると、なんだか嬉しくなり気持ちが軽くなったりしたことがありませんか?これは、香りが持つ効果が私たちの心と体に影響を与えているからです。
香りには言葉で言い表せないような特別な効能があり、香りを嗅ぐだけで過去の思い出が蘇ったり、リラックスできて深い眠りにつけたり、驚くべき効果が期待できます。この記事では人間の感情と大きく関わる香りについて解説しますので、香り効果をうまく日常に取り入れて快適な時間を楽しみましょう。
香りとは
誰でも、自分の好きな香りってありますよね。甘い香り、スッキリと目が覚めるような香り、刺激的な香りなど、どのような香りを好むかは人それぞれです。香りは良い香りや心地よい香りを立たせるだけのものではなく、心と体を元気にしてくれる効果を持っています。
香りが体内へ吸収されるルートは3つありますが、アロアの香りは鼻(嗅覚)を介して脳へと伝わり作用するのです。実はこの時、「香り=嗅覚」だけは人間の五感の中で唯一、直接「大脳辺縁系」に働きかけます。このメカニズムによって香りが持つ作用と効果は、瞬時に私たちの感情や行動に影響を与えるのです。ここでは、香りと脳の関係をもう少し詳しくみていきましょう。
嗅覚は五感の中でも太古から存在する感覚器
人間だけではなく、生物にとっても匂いを嗅ぎ取る嗅覚は大変重要な存在です。嗅覚を頼りに食料を探し、異性や敵味方を見極めて危険を察知して、生命を維持するために太古の昔から存在した、最も本能的な感覚器といえます。
本能的な行動や感情に関わる大脳辺縁系にダイレクトに届く
外界から五感(嗅覚・視覚・聴覚・触覚・味覚)が刺激を受けると、その情報は脳へと伝えられます。この時のルートが、嗅覚とそれ以外の感覚器とでは少し異なるため、香りによる影響が注目されているのです。
嗅覚以外の感覚器で受けた情報は、まず、論理的思考や言語機能を司る「大脳新皮質」を経由してから「大脳辺縁系」へと届けられます。これに対し、嗅覚からの情報はダイレクトに大脳辺縁系へと伝えられるのです。大脳辺縁系は人間の本能や感情を司る部分であり、自律神経を整えて心身の状態をコントロールする重要な役割をしています。
香りを嗅ぐと、考えるより先に感情が湧く
現代人は視覚と聴覚から受ける刺激や情報が多く、大脳新皮質だけがフルに稼働している状態です。これでは感情や情緒を掻き立てる感覚が乏しく、脳の活動バランスが乱れて精神疲労を起こしてしまいます。イライラする、どれだけ眠っても疲れが取れない、気分がすぐれずネガティブ思考になっているなどの症状があれば、脳が疲れている状態です。
しかし前述したように、嗅覚から得た情報は、本能や感情に結びつく大脳辺縁系へ直接届き、感情に影響を与えてすぐに作用し効果が期待できるのです。良い香りを嗅ぐと気分が良くなったり、リラックスできたりなど、香りによる効果をさまざまな場面で感じられることがあるでしょう。まさにこれが、香りを嗅ぐと考えるよりも先に感情が湧いてくる結果なのです。
香りがもたらす効果をご紹介
香りは私達が考えている以上に奥深く、さまざまな場面で効果が期待できます。自分自身にもたらされる効果はご承知の通りですが、人と関わるなかでは相手(自分以外の人)の心理に与える印象や影響までを変えるほどの効果に期待ができるのです。
相手に与える印象が大きく変わる
人との関わりはどのようなシーンでも欠かすことができません。相手に自分を知ってもらうには視覚と聴覚からの情報が最優先されますが、それだけでは伝えきれない内容も多々ありますよね。そのような場面でも香り効果に期待ができます。一緒にいた空間で嗅いだ香りにより、やわらかなイメージの人、明るい人、楽しそうな人、優しそうな人、華やかな人など、香りから感じ取れるイメージで印象を明確化させられるのは、香りが持つ魅力の1つです。
香りとセットで相手の記憶に残る
香りで印象をつけておくと記憶に残りやすくなり、同じ香りを嗅いだ時にその時の出来事が想い起こされます。この効果を「プルースト効果」と呼び、これは特定の香りを嗅ぐと、その香りにまつわる記憶や感情がよみがえる心理的現象です。フランスの小説家・プルーストにより執筆された「失われた時を求めて」に書かれている一説から名付けられました。
「パンが焼ける匂いを嗅ぎ、おいしいパン屋さんを思い出した」、「この香りは、あの有名ブランドのお店」というように、香りによるプルースト効果は、今では「香りマーケティング」にも活用されています。
香りの種類によって効果も変わる
香りによって期待できる効果もさまざまです。リラックス・リフレッシュ効果、気持ちを前向きにする作用が働き、その結果やる気や集中力アップにつなげる効果、部屋の消臭やインフルエンザや風邪の流行シ−ズンに活用したい抗ウイルス作用など数多くあります。
どの香りにするかで迷っているのであれば、欲しい効果で香りを決めてみてはいかがですか?ここでは、おすすめの香りをいくつかご紹介しましょう。
柑橘系はフレッシュな印象
日本人になじみ深い香りといわれる柑橘系は、好きな香りランキングに選ばれているほど人気です。フレッシュな印象を与えたい時には、柑橘系がおすすめ!
代表的な香りはオレンジ・グレープフルーツ・レモンなどで、甘みが少なくサッパリとした印象で爽やかな清涼感を持ち合わせています。リフレッシュ効果や鎮痛作用に期待ができ、芳香成分のリモネンが油汚れに効果的なため掃除や消臭にもおすすめです。香りの掛け合わせでイメージが変わるのも魅力的で、知的にきめたい時にはグリーン系アロマと、華やかさをプラスしたい時にはフローラル系アロマとブレンドすると良いでしょう。
ローズ系は甘くて重い印象
甘くて濃厚な香りのローズ系の香りは、気持ちを明るく華やかにしてくれます。鎮痛作用が高くストレスや緊張を和らげ、ラベンダーよりもリラックス効果が高いと言われているほどです。
また、女性ならではの悩みである月経前症候群や更年期障害の緩和にも効果的で、痛みなどのつらい症状を緩和してくれます。肌の再生力アップやターンオーバーの促進など、美容に関わる効果も持ち合わせている香りです。
ラベンダーは落ち着く印象
リラックス効果で知られるラベンダーの香りは、落ち着いた印象を与えてくれます。その落ち着いた香りから、睡眠時のアロマとしても有名です。
ラベンダーに含まれる芳香成分の酢酸リナリルは、脳内でセロトニンの分泌を誘発し、ドーパミンやノルアドレナリンといった興奮系の神経伝達物質を抑制します。その結果、自律神経の交感神経の働きを抑制し、代わりに副交感神経に働きかけて脳がリラックスしている時に出るα波を増加させるのです。気持ちを穏やかにしたい時には、ラベンダーの香りが効果的です。
ハーブ系はすっきりした印象
清涼感があり爽やかでスッキリとした印象を与えてくれるのが、ハーブ系の香りです。歯磨き粉やデオドラントを使用したときの、スーッとした感じを思い出していただくと分かりやすいでしょう。
芳香成分のメントールによる作用で頭をスッキリとさせ、眠気の払拭や集中力のアップに効果が期待できます。ペパーミントやスペアミント、ローズマリーなどがあり、虫除け効果も持ち合わせています。
香りで印象を作るならインプルーブ
その数300種といわれる香りから、自分にぴったりの香りを見つけるのは大変ですよね。好きな香りに欲しい効果がない場合は、香りをブレンドしてオリジナルの香りを作ってみましょう。
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